東京地方裁判所 昭和38年(ワ)2824号 判決
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〔判決要旨〕共有物件について民法第六〇二条所定の期間を越える賃貸借契約を締結するには、共有者全員の同意を要するものと解すべきである。
〔事実と争点〕本件土地は原告等三名および訴外永原せん、同永原菊枝の共有であるが、被告が昭和三七年一〇月頃本件土地部分に本件建物を建築所有して、本件土地部分を占有しているので、原告等三名は保存行為として被告に対し、本件建物収去土地明渡を求めたに対し、被告は抗弁として、昭和三七年一〇月頃右永原せんから本件土地部分を建物所有の目的で期間の定めなく賃借した、これは共有者たるせんの管理行為というべく、せんは本件土地について三分の二の持分をもつていて、本件土地共有者の持分価格の過半数を占めるから、被告はせんと締結した右契約により本件土地部分につき借地権を有する旨主張した。これに対し原告等は、せんの行為は共有物の管理行為ではなく、むしろ共有物の処分行為に属するから、これについて原告等の同意がない以上、せんのした賃貸借契約は効力を生じない旨再抗弁した。
判決は、右の点について次のように説いて原告等の再抗弁を容れた。
〔判決理由〕ところで、共有に属する物件について民法六〇二条所定の期間を越える賃貸借契約を締結するには、共有者全員の同意を要するものと解すべきである。けだし、右法条の趣旨は、賃貸借の期間があまり長いと実際の利害関係において処分行為に類似してくるところから、一定の期間を定めてそれ以内の賃貸借契約は管理行為とし、それを越えるものを処分行為として、管理の能力乃至権限はあるが、処分の能力乃至権限のないもののなす賃貸借契約について基準を定めんとするにあるが、この趣旨は共有物を第三者に賃貸するという共有者各自の利害を十分に考慮すべき場合に当然推し及ぼさるべく、前記期間を越える賃貸借契約の締結は管理行為ではなくて、処分行為の範疇に属すべきものというべきであるからである。してみると、被告とせんとの間の本件土地部分の賃貸借契約の締結は、せんが管理行為としてなし得ることではなく、共有者全員の同意を要するものであるところ、これ有ることの主張、立証のない本件においては、被告は右契約によりその主張の借地権を取得するに由ないというべきである。しかも、………により認められる本件建物の構造、被告が本件建物を建築した意図等より考えるときは、被告は民法六〇二条二号所定の五年の期間では到底前記賃貸借契約をしなかつたものと認められるので、一部無効の法理により右契約を右所定の期間に短縮してその効力を認めることもできない。(川上泉)